今日はロンドン市内で、午前中はツアー、その後フリータイムでした。朝7時(真っ暗)にホテルを出ます。朝早くにホテルを出た理由は、ロンドン塔のオープニング・キーセレモニーを見るため。ロンドン塔の衛士(ビーフィーターと言います)が、700年間戦時中も欠かさず行ってきた、ロンドン塔の鍵を開ける儀式だそうです。写真は、奥のあの扉を開けて帰ってきたところ。ビーフィーターから色々話が聞けて楽しかったけども、私は開けるとこよりも閉めるとこを見てみたいなぁと。予約チケットが必要みたいだけど、これもまた無料で21:40〜見学させてくれるらしいです(ネットで見かけた情報)。ロンドン塔は幽霊が出ることでも有名なので、ちょっと怖いけど昼とはまた違った趣だと思うな。本来の姿というか。次回のお楽しみにしておきます。
衛士のおじさん達がどの人もみんなチャーミング。若い人たちは下っ端ゆえ無表情であまり動いちゃいけないみたいだけど。今日はロンドンの現地係員の方(仮に田村さんとしておきます)の案内でしたが(でも中井さんもいる)、田村さんがこの衛士にお礼を言う時に「Thank you,sir」と言ってたのを耳にした。それでふと思ったんだけど、まぁ「sir(サー)」は目上の方への敬称で日常的に使うのかもしれないけど、元を正せば英国の騎士や卿なんかのことだよね。今でも階級や格式が重要視されていて、こうやって700年間変わらず誰が見てようが見てまいが決まった時間にセレモニー形式で鍵を開閉し続けてることも、形式張ってると言えばそうかもしれない(意味のないこととは思わないけれど。)身分の低い人たちは家紋を持つことさえできないって何かで読んだのを思い出しました。ロンドンの中心部に来てから、それを根強く感じる。路上生活者も沢山見た。ロンドン塔に収められてるイギリス王室の宝石の数々とか、ここでの王族たちの殺し合いみたいな黒い歴史も相俟って、イギリスは文化が素晴らしくて大好きな国だけど決して夢の国ではないよなーということを改めて実感。幸福の国と言われてきたブータンでさえ最近は自殺者が増加してるんだから、夢の国なんて実際ないんだろうな現実として。ここで働くことの方が東京で働くよりもずっとシビアだと思う。…って働こうと思ってたんかい(笑)。あ。でね、朝早く来たおかげもあるんですが、そもそも冬季とはいえ塔内がこんなにガラガラの貸し切り状態のことはまずなくて、王室の展示品とかもいつもは動く通路に乗せられてしかも歩かされるんで全然見らんないんだとか。そんな話を「へー」と実は半信半疑で聞いてたんだけど、塔内でのフリータイムの時に中井さんがワクワク目を輝かせながら、キョロキョロどこかへ消えてったのを見て、「あ。ホントなんだ」と思いました(笑)。
何しろ6人なのでフットワークが軽かったりどこも空いていたり何かとラッキーで、テムズ川のクルーズもほぼ貸し切り状態だったので、船長さんにしてみたらお金にならず飛ばしたらしく(笑。田村さんが「あれ?いつもは30分かかるんだけどなぁ」と言っていた)、予定には入っていなかったバッキンガム宮殿での衛兵交替式に、日にち的にも時間的にも間に合いそうだということで行けちゃいました。日にち的にもというのは、夏場と違い冬季は交替式が2日に1回だからなんですが、実は大雪でリーズ城に行くための道路が封鎖されてしまっていて3日目と4日目の日程を入れ替えて行動していたので、これも考えてみたらラッキーでした。:-) しかし冬場は衛兵が華やかな赤い服の上にコートを着ちゃうという悲劇(笑)。あれ?テレビやガイドブックでよく見る光景と違うっていう。時間に余裕があれば「ゆったりできてよかったですね〜」じゃなくて、有効活用でできるだけ楽しませようとしてくれる。「プロだ!120%の人たちだ!」と心底思いました。中井さんも田村さんもすごく魅力的で学ぶところが多い。ああなりたいもんだな。




その後はフリータイム。まずは大英博物館に行きます。なんだろうね、これは。ある物ある物すごいから圧倒されっぱなしで、興奮しすぎて鼻血出そうだった(笑)。博物館のものを好きに撮っていいっていうのは、なんて幸せなんだろう!あ。でも作りかけのミイラは、流石に居たたまれなくて撮れなかった。この人だって生きてたんだと思うと。その後も桁違いの物ばかりで、やばい、嬉しすぎて息ができない。段々訳が分からなくなって気持ち悪くなってきた(どんなだ。笑)。ギリシャに「返せ」って言われてるパルテノン神殿の彫刻群やハリーポッターに出てくるチェスのモデルになったチェス人形なんかを観て、バイオリンの元になった楽器やモアイ像からガンダーラ仏教美術までを観て出てきました。……ぐったり(笑)。お昼を食べてなかったので、せっかくだから名物(?)のフィッシュ&チップスでも。と思い近くのパブに入るものの、大英博物館症候群に陥ってて放心状態とゆーかお腹いっぱいであまり食べられなかったなぁ。すみません。
さて。とは言っても私にとって今日のメインはテートブリテンなんです。以前、渋谷Bunkamuraの「ミレイ展」にオフィーリアを観に行った時に「Sir Henry Thompson」という厳格なお医者さんの肖像画の眼力に、その絵の前から動けなくなってしまって、こんなこと言うと「気は確かかい?」って言われちゃいそうですがその後色々巡り合わせみたいなことがあったりして、私にとっては特別な絵なんですが、その絵が収められている美術館。バスでミルバンクまで行きます。平日のお昼だからかここもだいぶ空いていて、おかげで暫くヘンリーの絵の前のソファーに座って会話するような気分になれました。ここで再会したら泣くのかなーと思ってたんだけど、絵を前にしたら想像してたのとは全く違う感情が湧き上がってきました。なんと言うか穏やかに満たされてく感じで、ちょっとにやりとしてしまって小さく「久し振り」って言ってみた。1時間くらい絵の前のソファーでヘンリーを眺めていたら、美術館の(?)女の人が「この絵がとても好きなのね」と話し掛けてきてくれたので、「1年くらい前、東京・渋谷のミレイ展で彼を見て、忘れられずなんだかここまで来てしまいました」と笑ったら、その女の人が絵に向かって「やるわね、ヘンリー」って話し掛けたのが楽しかったし私はすごく嬉しかった。
「また来るからねーバイバイ」とヘンリーに告げてバスでまた中心部に戻り、せっかくなのでナショナルギャラリーでゴッホの「ひまわり」などを観てから、ナショナルギャラリーの目の前にあるトラファルガー広場ですんごい大っきいライオンの像によじ登ってきた。1人で(笑)。一応警備員さんはいるんだけど登っても何も言われないと聞いてたので登ってみたかったんです、みんな登ってるし。本当は写真撮りたかったんだけどね、ライオンから下まで結構距離があるんで(柵もある)、誰かに写真頼んで一眼レフ(もしくは携帯)持ったまま逃げられたら一巻の終わりだよな。と、ここは冷静になってみた。オットナー。しかしただ登って眺望を確認したのち、無言で下りる…この時ばかりは1人が苦にならない私も流石に孤独を感じたよね(笑)。日もとっぷり暮れたし、これ以上心が寒くならないうちに戻ろう(笑)とホテルまで送迎してくれるマイクロバスが来てるはずのコウ゛ェント・ガーデンまで歩いて行く。
夕方になりまた雇用時間の問題で、迎えに来てくれてる運転手さんが昨日仲良くなった、自分の旅行会社を起こすことが夢の女性(仮にアンドレアさん=アンディとしておきます)に替わっていて、寒かった心がちょっと救われました。アンディはバスを離れられないので、スタバでホットコーヒー買っていって2人でバスの中で話しながら他の人たちの帰りを待ちました。恐らく噛み合ってるような噛み合ってないような会話だったけども(笑)。でも「今日は夕飯の時間が早いから、その後一緒にミュージカルでも行く?」と誘ってくれて、思いがけず本場のミュージカルが観られることに。アンディに感謝です。:-)
ホテルのレストランで食事を済ませて、バスを会社に置いてきたアンディとピカデリーサーカス駅で合流。すぐ近くのHer Majesty's Theatreという劇場で「オペラ座の怪人」を観ます。英語の拙い私でも分かるだろうと思ってオペラ座の怪人を選んだんですが、ミュージカルは殆ど初めてと言っていいほどだし、ロンドンのド真ん中でオペラ座の怪人て…服装大丈夫なん?とちょっと心配だったんです。夕食の席で中井さんに訊いたら、今は観光客が殆どだからドレスコードとかもないしパンツで大丈夫ですよーと言われたので、そのままの格好(パンツにムートンブーツ)で来ちゃったんですが、入ってみたら本当にみんなカジュアルでひと安心。アウトドアしてきた帰りらしい装備(フジロック的な)の親子もいました。始まる前に劇場の写真を撮ってみたものの、一階中央席だったためどう足掻いても全体が入らなかった。無念。舞台は「おや?」と思うほどこぢんまりしてたけど、私達の隣の席に座った、各国でミュージカルを観てるという日本人観光客のおばちゃん曰く「臨場感があってサイッコーー!!」とのこと。なるほど、ライブと一緒なんだね。大きけりゃいいってもんじゃなくて、「小さいハコ」の方が「アツイ!!」ってことなんだろう。確かに迫ってくる感じがあったし、役者さん達もよかったなー。脇を固めてる人たちも個性がはっきりしてていい味を出してたし、やっぱり主演の女の人の歌声が素晴らしかったな。劇中歌で「Think of me」というどうにも耳から離れない歌があったので、帰ってきてからNapsterで何バージョンかダウンロードしたんだけど、彼女の感情表現の豊かさ・声の優しさ・可憐さを越えるものはなかった。あの人が歌ってる音源があるのか分かんないけど、ちょっと探してみようかな。
ミュージカルは19時半〜22時までで、その後アンディと23時まで飲んでタクシーでホテルまで帰りました。アンディとは今もメールのやり取りをしていて、私は高校時代の文法のテキストを引っ張り出してきて今必死に英語の勉強をし直してます(笑)。

【小噺(こばなし)・メモ】
◆到着2日目で大体通貨の感覚が分かってきて買い物に不自由がなくなって、到着3日目で英語にも馴染んできたようで、モーニングコールに対して寝ぼけて「Just a moment...(もうちょっと寝かせて…)」と言ってしまう。笑われて「頼むから起きて」と言われました。めちゃくちゃ恥ずかしかった。
◆ロンドンは上着のフードをかぶってる+リュック率が高く、普段の自分の自然なスタイルに似てたのでなんだか気負わず居心地がよかったな。その分、帰国して成田空港を出た後の居心地の悪さといったらなく、東京駅に着いた時に知り合いが「今日本橋にいるから会う?」ってメールをくれたんだけど、なんか自信がなくなって会えなかった。東京だと自分らしくいられないのはなんでだろう。
大英博物館症候群のことを帰ってから友人に話したら「…それ、お腹いっぱいじゃなくて胸がいっぱい、じゃないの?ほんっと色気ないねー」と笑われました。胸がいっぱいか、なるほど(笑)。